クーラの一日
〜前編〜





午後八時。

もう太陽はとうに落ち、月が街全体を薄く照らしている。

それだけでは光が足りず、人々は街灯というものを作った。

街灯は月明かりより眩しく、暗い街に明るさを与えた。

今宵は満月。

丸い月が夜空にポツンと浮かんでいる。

星達は夜空と交わり、月の存在を引立たせている。

「……キレイ。」

窓から顔を出す一人の少女。

水色の髪に、真紅の瞳。

手には土色のグローブらしきものが装備されている。

真紅の瞳を輝かせなから、彼女は月と、その周りの星達を眺めていた。

「あ、流れ星!」

夜空を走る一筋の光が、少女の興味心を沸き立たせる。

「ねぇ、ダイアナ!」

隣の部屋で、ソファに寄りかかりながら電話をしている女性に声をかける。

彼女の保護者であろう、少女の頭一つ分くらい高い身の丈の女は、電話をしながら少女の呼びかけに反応する。

「なあに?クーラ。」

ダイアナと呼ばれた女が、クーラという少女の方を向き、応答する。

「流れ星を見てお願い事したら、それが叶うんでしょ?」

クーラという名の少女が、目をキラキラさせながらダイアナに話しかける。

真紅の瞳が、好奇心という感情の高ぶりで、宝石のような輝きを魅せている。

「クーラ。お願い事は流れ星がいる時にしないとダメなのよ。」

「え〜〜。」

キラキラと輝いていた瞳が、瞬く間に曇った色に変わる。

瞳の奥に見えていた感情も、今はマイナスな方向に向いていた。

「流れ星でも見たの?」

そんな下向の感情に気付いたのか、今度は女から少女に優しい声で話しかける。

「………うん。」

細い声で答える少女は、不満としか言いようがない顔をしている。

「流れ星が来るのは今日だけじゃないから、また来た時にお願いしなさい。」

「…次はいつ来るの?」

説得した女に痛い一言が返ってきた。

このくらいの女の子は、保護者の言った事を真に受け、信じてしまう。

嘘や憶測を言うのは妥当ではないとふんだのか、彼女は、

「それは私にもわからないから、頑張って次のを探しましょう。」

という一言で少女との話を区切り、電話の相手に話しかけていた。

「…つまんない…。」

頬を膨らませ、すっかりご機嫌斜めな少女。

「何か面白い事ないかなぁ…。」

また空を見返す。

空は相変わらず月が街を照らし続けている。

夜空を見返しさほど時間は経っていない。

「…そうだ!」

暗かった表情がまた輝いた顔になる。

(ダイアナ、電話してるから、今のうちに外に遊びに行っちゃお!)

子供の悪知恵とでも言うのか、発想力がいいと言うのか、それは人それぞれの価値観によって変わってくる。

クーラ自身はきっと発想力がいいと思うだろう。

いや、きっとではなく、思っているだろう。

しかし、ダイアナは子供の悪知恵と思うだろう。

彼女は保護者であろうという立場にいる以上、夜子供が一人で出歩く事は大変危険と感じ、止めに入る。

そう、普段ならである。

今彼女は電話で誰かと話している。

その隙をみて彼女は出ようというのである。

(ちょっとくらいなら、大丈夫だよね。)

静かに玄関の扉に手をかけるクーラ。

扉の外に全然出たことのない彼女にとっては未開に地である。

「…そう、わかったわ。きっとあの子喜ぶわよ。」

そう言い、電話を切るダイアナ。

「ウィップったら、あの子の事になると心配性なんだから。」

ソファから立ち上がり、電話の子機を置きに行ったダイアナが見たものは、

水色の髪の少女がいなくなった、窓の一つが開かれた広い部屋だった。

「!?あの子!!」


クーラは、夜の街に繰り出した。



クーラの一日〜後編〜
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