KOF AIS
果てへの招待状








宙を仰ぐ。

薄く水色がかった空。

雲ひとつない景色。

サンサンと太陽の光が地上に差し込まれる。

耳を澄ますと、水の流れを感じる。

静かに音を立て、右から左へと緩やかなリズムを刻む。

そこに、規則正しいリズムを狂わせる音楽が聞こえてくる。

鉄橋の上を走るエンジン音。

渋滞のイライラを、間抜けな音で解消する。

清らかな時間が、あっという間に迷惑極まりない騒音の部屋へと変貌してゆく。



「………全く、とんだ近所迷惑だぜ………」



芝生の上で寝転んでいた男が、不機嫌そうに愚痴る。

齢は20前後といった所だろうか…十字架の入った黒い服の上に白のジャンパーの様な服装。

ズボンは黒一色という、上下正反対な色彩であるが、それを見事に着こなしている。



「もう少し静かにできねぇものか…五月蝿くて昼寝もできねぇ…」



誰もいない場所で一人で喋る男。

地面が暖かい。

強い日光を受け、温度が上昇している。

遠くが蜃気楼の様に、ぼやけて見えるのも理解できる。

気温32℃。

扇風機やクーラーがあれば適度な温度を保つ事ができるだろうという数値。

しかしここは屋外。

そんな気の利いたモノがあるわけがない。

仮にあったとしても、それを稼動させるための必要な電力が見つからない。

男の額から汗が滲み出る。

それを手の甲で拭いながら、強すぎる光を防ぐ。

逆の手には、一通の手紙らしき物が握られていた。




































THE KING OF FIGHTERS 参加通達書




































表面にそう書かれている。

暑さに苦しみながらも、紙切れを視界に広げる。




































THE KING OF FIGHTERSを開催いたします。



















ルールは従来通りのチーム形式で行いますが、



















前回とは多少異なる点がございます。



















詳しくは会場でご説明いたします。



















貴殿の参加、お待ちしております。



















……以上  【R】





































紙面にはたった6行の文章がパソコンで打たれていた。

…差出人不明の手紙…

わかるのは、文中の最後の【R】という文字だけ。

差出人がわからない代わりに、文の最後に一言、謎の文字が書かれている。

KOFの大会はいつもそうである。

男は手紙を読み終え、その場で立ち上がる。

手にしていた紙切れが、目の前で燃え上がる。

血のような深紅で彩られながら、姿形を変えてゆく。

瞬く間に、視界は辺りの景色に変わっていた。

しかし、手紙を持っていた手は、物質を失っても燃え続けていた。

燃え盛る炎を見つめる男。

その顔は、好奇心あふれる子供の様な面をしていた。



「…フン…何処にいても、見つける事ができるってわけか…」



笑いながらまた独り言を言う。

全身に力が入る。

炎が勢い良く握り潰される。

大気までも燃やしてしまったのか、握り拳から灰色の煙が立ち昇る。



「…あ、こんな所にいた。」



炎が消えたと同時に、後ろから声をかけられる。

透き通った、それでいてまだ幼さを感じる声であった。

綺麗な声に相応しい容姿をした女性が足早に近づいてくる。



「もう、いなくなるなら何処か一箇所に決めてよ。探すの大変なんだからね!」



いきなり出てくるなり、膨れっ面でモノを言う。

この暑い中、色んな所を探し回ったのだろう…

肩で息をしながら、火照った体から出る液体を拭っている。



「俺が何処にいようと勝手だろう。」



多少反発の意を込めて反論する。

無論、普段はそんな風には返さない。

暑さのせい、騒音のせいもあってか、多少ストレスが溜まっていた。



「…で、今日は何の用だ?」

「あぁそうだった、お兄さんが呼んでるわよ。」

「兄貴が?」




珍しい人物からのお呼び出しに、つい驚いてしまった。

兄とはあまり顔をあわせていない。

いや、あわせられないと言った方が正しいだろう。

あの人にも仕事があるし、こっちもそれなりに忙しい。

前大会の一件以来、色々と狙われやすくなってしまった。

それだけ凄い活躍だったのか?

そう聞かれると、自分では解答に困ってしまうのだが、

世間からはそれだけの事をした様に見えるらしい。



「うん、何か話があるみたいよ?」



…あの人からの話って…一体なんだよ…

説教だけは勘弁してほしい、という気持ちが態度に出ていた。

何の用事だと女に聞き返すが、さぁ?という返事しか返ってこなかった。



「…仕方ない、行くか…」



面倒だと思いながらも、呼び出し人のもとに向かうべくその場を後にした。

男のいなくなったその場所は、静かなリズムと、五月蝿い不規則なリズムが混ざり合っていた。








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