ふ た り
第二章
きわめて悪質な行為と見て
警察は、犯人の捜索と
事件の解決を進めています。
午後4時。
部屋のテレビの電源がONになっている。
大きな液晶の中には、手元の原稿を読む女性アナウンサーが映っている。
時間帯からして、珍しい事ではないが、いつもと様子が違っていた。
ニュース番組であった。
番組を中断しての特別放送。
だからなのだろうか。
アナウンサーの後ろの部屋でせわしなく動く人影。
それがいつにも増して多い。
女性はそんな忙しい中、淡々と原稿を読んでいた。
内容はこのようなものだ。
「デパート爆破無差別殺人事件」
正午頃、とあるデパートが何者かによって爆破された。
死亡者200人以上、生存者0。
大規模な爆発だったらしく、周りの建物にも被害が及んでいる。
デパートには脅迫状やその様な類のものは送られていなく、
犯人は誰でもいいから殺したい、無差別殺人犯だという。
目撃証言はあったものの、これといった情報がなく、捜査が難航している模様。
犯人の特徴は、30歳前後の男で、身長175〜180センチ、黒のコートを着ていた。
という情報が入っている。
この情報ではそんな人物は何処にでもいる。
だから捜査が難航しているのだそうだ。
部屋には男がソファに座ってテレビを見ている。
テレビの音以外、男のいる部屋には何も流れていない。
静寂が部屋を覆う。
男はテレビのチャンネルを変えた。
男が行動を起こすと、ソファからギシギシという音が発せられる。
静かな部屋なだけにより大きく響く。
テレビはチャンネルを変えた先でも同じ事を言っていた。
全てのチャンネルがその話題でもちきりになり、本来の番組を流している局はなかった。
「………全チャンネル、か。」
小さくそう呟くと、男はテレビの電源をOFFにした。
立ち上がり、距離にして約3mのキッチンに足を運ぶ。
その時、呼び鈴の音が男の耳に入ってきた。
男はその音を無視し、水道の蛇口をひねる。
右手にロックグラスを持ち、それに八分目くらい濁った液体を入れ、一気に飲み干す。
呼び鈴の音が、再度男の耳に入る。
男はゆっくりとした歩調で玄関に向かった。
三度目の呼び鈴。
男は玄関の扉のロックをはずし、ゆっくりと開けた。
目の前に男が二人、コートを羽織って立っていた。
「…どちら様ですか?」
突然の訪問で聞き慣れた、主婦等がよく口にする台詞を吐く。
「すみません、警察のものですが、双海優樹(ふたみ ゆうき)さんでいらっしゃいますか?」
「はい、そうですが…何か?」
「デパート爆破事件の事でお話しを伺いたいのですが。」
二人の警察官は、表情を変えずにスラスラと話す。
右の男は齢50後半くらいだろうか、頭皮が見えはじめてきている。
隣は新人なのだろうか、とても若い。まだ20代だろう。
「あの事件が、何か?」
住人は、なぜ家に爆破事件の事で来るんだという感じで聞き返す。
「あなたがあのデパートに行っていたという情報が入りましてね。」
「それで、何か不審なことがなかったかと思い聞き込みに来たのですが。お時間よろしいでしょうか?」
「あ、はぁ、いいですが…」
住人は警察という圧力に負けたのか、しぶしぶ承諾する。
外気の冷え込みが激しくなる。
住人は二人の警察官を家の中に案内した。
警察官も住人も人間である、寒さに耐えるにも限度がある。
居間に招待された警察官は羽織っていたコートを脱ぎ、対に置いてあるソファに腰を落とした。
住人は、警察官と自分のコーヒーを入れにキッチンに立っていた。
姿勢良く、静かに待機する二人。
住人はやかんに水を入れ、コンロに火をつける。
カチッっという音が、静かな部屋の中でコダマする。
住人は笑っていた。
頑張って努力して、成功した時の様な、
喜びに満ちた笑みが。
お湯が沸いた。
双海優樹に対する、
警察の聞き込みが始まる。